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日記
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体重はまったく変わりません。体質改善もあるのかどうか……

個人差っていうけど、いくなんでもあんまり……
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無題
「成田の携帯電話はパケホーダイ?」
「そうですけど」
「それならよかった」
「見ての通り、僕は毎日ここで出品と落札の管理をしている。わかるね、僕はとても忙しい。だから、君のためにこれらの商品や出品者を吟味して落札をしてやることはできない。僕がやるのは、君が指定した商品を落札することだけさ。どの商品を落札したいかは、君が決めるといい」
「まあ、これだけ言ったのだから、わざわざ評価が悪いところの商品を落札してほしいというはずはないだろうけど、もし入札する段階で、明らかに出品者の評価が悪かったり取引に不安を感じさせるような相手を選んだ場合は、取引のほうを中止させてもらう」
「取引の流れを、もう一度確認しておこう」
「君は、崖の上のポニョの試写会のハガキを選ぶ。僕がそれを入札して落札する。ところで、予算はどれくらいを予定しているんだ?来週の試写会で、開催日が差し迫っているにもかかわらず、これまでの落札価格は二千円前後といったところだ。試写会でこの金額は珍しいと言えるね。たいていの試写会は高くて千円程度、安ければ五百円といったところか。
それだけジブリ人気が高いというわけだ。だから、オークションの終了間際の方が落札価格が下がるとは思わないほうがいいかもしれない。このままの値段で推移する可能性のほうが高いといえるだろう。
NONAME 2008/12/27(Sat)16:02: 編集
無題
「いえ、余ってないですけど……」
成田がそう言うと、男は残念そうに項垂れて、「そうですか」と、ぼそりと呟いた。

男のそばを通り透けて、二人は階段を上がる。
踊り場に差し掛かったところで、涼子が、男のほうを一瞥し、「なにあれ?」と、無感情に言った。
男が、次にやってきた親子に対して話しかけるのが見えた。おそらく、自分たちに言ったのと同じことを、言ったのだろう。
母親は、「一枚余ってるよ」と無邪気に男のそばに歩み寄る子供を引き寄せて、「すいません、余ってませんから」と早口で言い、男の方を見ずに、階段を駆け上がった。
「あいつ、おかしいんじゃない?」涼子が吐き捨てるように言う。
「こういう試写会の懸賞とかって、当選したかどうかなんてわからないじゃん。だって、当選者の発表は、賞品の発送を以って……でしょ?
確かに、映画が見たいのはわからなくもないけど、あれじゃあ、物乞いみたいじゃない。最低」
隣に、慌てふためいている人がいると、逆に自分は冷静になれるという話を良く聞くが、どうやら、隣に怒っている人がいても冷静になることができるようだ。

もしかしたら。成田はハガキが届かないという可能性について考えてみた。
あの男も、オークションで試写会の当選ハガキを
購入したのではないのか。しかし、出品者側の対応が悪かったせいで、当日までにハガキが届かなかった。そう考えることもできる。
「早く」
涼子が階段の先で、成田を手招きした。
開いてしまった距離をつめるために、あわてて階段を上る。

三階につくと、すぐそばに会場の入り口が見えた。その両脇に係員が二人いて、招待ハガキのチェックを行っている。その入り口に入るための列が、エレベーターのほうに形成されていたので、二人はそちら側に向かい、最後尾に並ぶ。
NONAME 2008/12/28(Sun)15:56: 編集
無題
ハガキを受け取って中に入るという流れなので、列はよどみなく進み、すぐに成田たちの順番が回ってきた。
そして、封筒からそのハガキを取り出す。
受付の係員にハガキを渡して、中に入ろうとすると、係員に腕をつかまれた。
「申し訳ございませんが、ハガキが一枚で入れるのはお一人様だけです」
丁寧な口調だが、それゆえに、融通が利かない堅さを伴っている。
「ちょっと、どうしたの?ハガキないの?」
「いや、そんなはずはないんだけど……」
しかし、封筒の中にはハガキはない。
確かに、牧野はちゃんと中身があったって言ったのに。
後ろの列がつかえてきたので、とりあえず列から外れて階段のそばまで戻る。
涼子は、次々と消化されて行く列を見ながら、「ちょっとまだ見つからないの?」と成田を急き立てた。急がないと、会場の席が思っているのだろう。
だが、ないものはない。
他の場所に入れたんじゃないか、と、涼子は言うが、ハガキは封筒の中に入っていたのであって、他のところには入れていないのだ。だから、もう探す場所はない。
成田は、携帯電話を取り出し、牧野に電話をかけた。
「どうした?もう会場じゃないのか?」
「どうしたじゃないよ。ハガキがないんだ。牧野、ちゃんと確認したんだろ。でも、ハガキがないんだ」
電話越しの牧野の声が険しくなった。
「失礼なことを言うな。俺が取ったとでも言いたいのか?ふざけるなよ。俺は、ちゃんとはがきが入っているのかを確かめるために、封筒を開けたが、それだけだ。誓って中身には手をつけていない」
「そんなはずはない。ハガキが一枚足りないんだ」
「お前、何言ってるんだ。ハガキはもともと一枚しいだろ?」
「え?」
今度は、こちらが何も言えなくなった。
「お前が落としたオークションのやつ見たけど、お前が落札したの、ハガキ一枚じゃないか。お前、ハガキの枚数を言ってないじゃないか。俺はてっきり一枚だと思ってたんだよ。二枚ともハガキを捨ててるなんて思わないだろ?」
NONAME 2008/12/28(Sun)16:19: 編集
無題
「一応、言っておくけど、こっちには非はないぞ。
お前は、俺にハガキが何枚欲しいって言ってないんだからな」
「どうしたらいいんだよ」
「どうにもならないだろ。ハガキがないと入れないんだ。当たり前だろ。あきらめるしかない。でなければ、お前か妹のどちらかが中で映画を見るとか……」
「そんなことできるわけないだろ」
「いいよ」涼子が言った。
「もともとお兄ちゃんが当てたんでしょ?だったら、お兄ちゃんが見ればいいじゃない」
「お前を置いて、一人で見れるわけないだろ?」
「元はといえば、お兄ちゃんが悪いんでしょ?」
二人の話し声が大きくなる。このままいけば、口論になり、衆目の前で喧嘩に発展するかもしれない。
しかし、階段を上ってきた男が視界をよぎると、二人は話すのをやめて、その男を目で追った。
さっきまで、二階で「ハガキが余っていませんか?」と訊いてきた男は、もう一人の男と連れ立って、階段を上がってきたのだ。
二人の間を流れるよそよそしい雰囲気から、二人が既知の友人ではないことが伺える。当選したのに、ハガキが届かなかったと言った男の同情を引く言葉にすっかりやられたか、金銭による取引があったのかはわからない。


NONAME 2008/12/28(Sun)16:30: 編集
無題
男はすれ違いざま、笑みを浮かべた。ハガキがなくて入れないという事を理解したのかもしれない。彼の笑みには、優越感がありありと見て取れた。
それを見た涼子は、かちんと来たのだろう。成田に向かってこういう。
「あたしも、あそこで待つ。それで誰かと一緒に入る。さっきのやつだって、あたしたちが通り過ぎてから五分くらいで、もう余ってる人を見つけたのよ。大丈夫よ。だってまだ開映時間までは、まだあるんだし、ここを通る人だって、まだまだたくさんいるはず」
そういうなり、涼子は、階下に向かった。ここで話をしている間に、二階を通り過ぎてしまう人がいたら、勿体無いと思ったのだろう。
成田は、涼子が来るまで階段の踊り場で待つことにした。
階段を上がってくる人は、「なにあれ、そこまでして映画が見たいのかしらね」と、涼子の事を口にしていた。涼子に対してかけられるそのような言葉は、すべて自分にかけられるべきものであったので、成田の胸はとげが刺さったように傷んだ。
五分が過ぎ、十分が過ぎた。次第に、列は短くなっていく。開映時間が差し迫っていることもあってか、さっきよりもエレベーターは混み合わなくなったようで、階段から三階に向かう人はほとんど現れない。
確かに、時間はまだ残されているけれど、みんなが階段を使ってくるわけじゃない。時間が過ぎれば過ぎるほど、エレベーターには空きが出る。前の回の試写会を終えて出口に向かう人間はもう三階には見えなくなったので、一階のエレベーターホールはさらに空いていることだろう。
わざわざ好き好んで、階段を上ってくるような人間がいるとはとても思えなかった。
エレベーターの前で待ったほうがいいかもしれない、と涼子に言おうと、階段を下りたところで、涼子の姿が見えた。こちらに上ってくる。隣には、男の姿があった。涼子の父親といっても十分見るものを納得させることができる中年の男だった。脂ぎった額からは汗が噴出し、それをタオルで拭いていた。一歩階段に足を踏み出すたびに、呼吸が乱れ苦しそうに息を吐いている男。
よりにもよって、涼子の懇願を聞き届けたのは、普段ならば絶対に近寄りたくないようなタイプの男だった。
三階にたどり着いた男に「ありがとうございます」と、成田が言った。
男は、「気にしなくていい。ちょうどハガキが一枚余っていたんでね。それより、君は何でここにいるんだ。開場時間をだいぶ過ぎてしまったんだから席を探すのも大変なんだぞ。こんなところでぼうっと突っ立って、何を考えているんだ」
涼子をこの場で待つということしか頭になかった自分は、そんなことにまで気が回らなかった。
「さあ、急ごうか。席が空いているといいが」
男は、涼子を急かし、列に向かった。足早に歩き、あっという間に列の最後尾に着く。
NONAME 2008/12/28(Sun)17:01: 編集
無題
形成されている列はとても短いので、二人はすぐに会場の中に入っていった。
成田も、すぐにその後を追おうとしたが、間の悪いことに、エレベーターがたくさんの人間を吐き出した。階段よりもエレベーターのほうが、列に近い。成田は、その列の最後尾となった。
十人ほどで作られた列はすぐに解消されたが、二人の姿を見失うのには十分な時間だったようで、すでにロビーに二人の姿はなかった。
すでに会場の中に入って席を探しているのだろう。そう思い、成田は、ロビーの扉を開けて、中に入る。
すでにホールの中は薄暗くなっていた。ついている明かりは薄暗いものばかりで、涼子の姿を探すことはおろか、空いている席を探すことさえ困難に思えた。
男の言葉が思い出させる。
涼子を待っている時間があれば、先に中に入って席を確保しておけばよかった、と涼子をただ突っ立って待っていた十分間を今更ながら後悔した。

もしかしたら、涼子がどこかから呼びかけているのではないか、と思ったりもしたが、周りにいる子供の声が邪魔をして涼子の声を聞き取ることはできない。どこかで手を振って位置を知らせるような動きはないか、と目を凝らしてみたが、涼子の姿を認めることはできない。そのうちに、「まもなく上映開始です」というアナウンスが始まり、薄暗いホールから、さらに光が失われた。
ここまで暗くなっては、涼子を探すことなんてできやしない。仕方なく、成田は空いている席を探しそこに座った。程なくして、映画が始まるが、視線は、スクリーンに固定されず、無駄とわかっているのに、あたりを見回した。そのせいで、あれほど見たかった映画なのにほとんど内容が頭に入ってこない。

NONAME 2008/12/28(Sun)17:19: 編集
無題
スタッフロールが始まると、客がちらほらと席を立ち始めた。
この中に涼子がいるかもしれないと思った成田は、席を立ち、ロビーで涼子を待つことにした。
閉じられた扉の向こうから、「これにてすべての上映を終了いたします」のアナウンスが流れた。
さらに多くの人が、ホールから出てくる。
成田はひとつしかない入り口のそばで涼子を待つ事にした。しかし、いくら待っても涼子は現れない。
何かあったのではないか、とロビーを涼子の姿を求めて歩いた。ロビーで目に付くのは、係員だけで、ほかに来場者の姿はない。
もしかしたら、もうすでに出て行ったのかもしれない、と思いながら、入り口の外に視線を向けると、次回の試写会の待機列が形成されていた。そのため、視界の中に涼子の姿を捉えることは出来なかった。
「君、もう出てもらわないと困るんだけど。じゃないと、次の人が入れないだろ?それとも、次の回のハガキを持っているのかい?」
「次の回のハガキがあれば、ここから出なくても大丈夫なんですか?」
「本当は、よくないんだけど、まぁ、見つからないようにしていてくれれば。ロビーの端とかね。入場してくる人は、入り口から一番近い扉から入るだろ?だから、入り口から一番離れたロビーのところで待機してもらって、頃合を見て出てきてもらうって言うのは、黙認しているんだ。たとえば、たくさん試写状を持っている人とかはね」
「妹がいないんです。まだこの中にいるはずなんです」
「そんなはずはないな。だって、ついさっき僕はロビーを点検したけど、そんな年頃の子はいなかったよ。老夫婦がいたくらいだな。君の妹は、もう出たんじゃないか」
「でも、携帯電話はつながらないんです。階段のそばでは、電話はできるけど、ホールの中では電話ができませんよね?」
「そうだね。このロビーの中は、圏外になっているから。だから、電話がつながらないとなると、電源が入っていないか、電波の届かないところにいるしかない」
「だから、妹はまだここのどこかにいるんですよ」
「そうは言ってもね。本当に見てないんだからしょうがないだろ?ロビーにいたのは、老夫婦だけだ……あ、あとトイレに一人男性がいたな。それだけだよ。女子トイレのほうにも誰もいなかった」
「トイレだ」
成田が、トイレに向かって駆け出した。
男子トイレの、個室ドアはすべて開いていた。どうやら、誰もいないようだ。
「そっちじゃなくて、『だれでもトイレ』の方だよ。でも、さっきも言ったけどトイレの中にいるのは男性だよ。君の妹じゃない」
「今、妹は男の人と一緒にいるかもしれないんです」
「確かにおかしい。あれから、五分以上たっているのに、まだ使用中のランプがついている」
係員が、トイレのドアをノックした。
「すみません、大丈夫ですか?」
「え?何が?」
息も切れ切れの男の声がした。
「こいつですよ。この声。間違いない」
トイレの中にいる男に聞こえないように、成田は小声でそう告げた。
「トイレに入られてから、三十分が経過してますので、ドアを開けさせてもらいます」
NONAME 2008/12/28(Sun)17:51: 編集
無題
「何するんだ、大丈夫だって言ってるだろ?」
ドアが開くと、男の声が鮮明に聞こえた。間違えるはずもない。あの男の声だ。
成田が、トイレの中に飛び込む。
「涼子」
男は、便器に座っていた。ズボンは下ろしていない。
涼子は洗面台のそばに立っていた。
成田の姿を確認すると、「お兄ちゃん」と叫び駆け寄る。
涼子の体は震えていた。無理もない。狭い個室で見知らぬ男と二人っきりにされたのだから。その恐怖は計り知れないだろう。

男は、一緒にトイレの中に踏み込んだ係員の手によって取り押さえられた。男は、抵抗することなく、捕まった。ただ、涙ながらに「ただ一緒にいたかっただけなんだ。あの子が試写会が見たいって言ってたからさ。だから、ハガキをあげて一緒に入ったんだ。それだけだよ。何もしてない。本当にただ一緒にいたかっただけなんだ。信じてくれよ」

後になってわかったことだが、男は
NONAME 2008/12/28(Sun)18:01: 編集
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